コラム

2021.05.20

【回転すし】江口歩

たぶん45年位前、僕が小学生のころ、古町に回転ずしが初上陸した。
親戚のおばさんから画期的なシステムで、しかもお手軽な値段という触れ込みで、高校生だった従兄と行った記憶が残っている。
僕は五皿くらいでお腹がいっぱいになったけど、高校生の従兄は10皿以上食べ、皿が積みあがっていく様を子供心に、高校生と小学生の胃袋の力の差を見せつけられた強烈な記憶が残っている。
そんな僕も高校を卒業して東京の専門学校へ。
盆暮れに新潟に戻って来ると回転ずしを思い出す。
その当時の古町は、東堀通りと西堀通りの一方通行で、新津屋小路から西堀通りに入って、新堀通りから東堀通りに入る、ぐるぐるコースがあった。
土曜日の夜になると、様々な車がこのぐるぐるコースを何周もして、歩いている二人組の女性に声を掛けてナンパをする。助手席の男がそこそこのルックスだと成功率は高いけど、それでも車が軽自動車だと確率は下がる。

確立を上げるために車も多種多様な車がぐるぐるしていた。
このぐるぐるナンパは盆暮れの度にやっているけど、成功した記憶がない。

ひょっとしたら一度や二度は上手くいったのかも知れないが、記憶に残っていないところからすると、そんなに感動的なドラマはなかったのだろう。
これは回転すしに似ている。
高級車のトロは、お客さんの目に留まれば、ちょっと食べてみたい。
実際に食べたいと思っているのはトロ側なんだけど、ちょっと乗ってみたいと思う車だけでも成功率は高くなる。
実際、乗ってみたいと切実に思っていたのはトロの方なんだけどね。
正確には高級車がトロだとすると車の中にいるのはシャリか。
シャリの色艶が良ければ、さらに確率が上がる。

回転すしに来るお客様は女性ばかり。

ぐるぐる回るネタは男ばかり。

いいネタはすっと回転すしのレーンからすぐに消えていき、ぐるぐる回り続けている僕をふっと俯瞰してみると、ネタがカッパ(軽自動車)で、シャリも何だかねっちょり(オレ)していたためか、未明になってもぐるぐるとしていた。

軽自動車と高級車の歴然とした差を見せつけられた記憶がいまだに強烈に残っている。

回転ずしへ行くたびに古町第一号店へ行った思い出と古町回転ナンパを思い出す、というお話でした。

Writer:江口歩