古町通5番町商店街 CINQUE

五番町今昔物語〜老舗の視点でひもとく、商店街の歴史〜 2/5

20161122_0127 「古町」の歴史は文字通り古く、およそ200年前の江戸時代からその名はあったと言われています。特に五番町では創業100年を超える店舗がいくつも存在。新しいお店とともに、商店街の中で営みを続けています。今回は、老舗3店舗による座談会。時代の移り変わりの中を歩んできた古町の歴史を振り返ってみました。今回はその2回目。

■参加メンバー

竹ノ内 智光(竹長糸店)

長谷川 尚英(長谷久商店)

池 一樹(はり糸)

 

 

第2回 無形のサービスを提供すること

 

—お店を長く続ける秘訣は何でしょうか?

 

竹長

当店で売っているのは生活用品で、華やかな商品ではないんですよね。糸とか毛糸とかボタンですから。糸のように、細く長く、堅実にやってきました。うちの父はハイカラな面もありまして、戦前から国産の毛糸だけでは飽き足らず、イギリスからビーハイブという毛糸を輸入して売っていました。その毛糸がすごく売れたんです。扱っているお店が、新潟県でうち一軒しかありませんでしたからね。随分お客さんが来てくれました。蚊帳もね、紐をひっぱるとスカートみたいに広がるので、その中に赤ちゃんを寝させたりね。あとは、昔はお膳でご飯を食べていたので、ハエがたからないようかぶせる「蝿帳」というものもあったんです。それも売れましたね。蚊帳は他店でも売っていましたが、全部「行燈形」で、上から下まで同じ太さなんですね。それだと蚊帳の中に入りにくいというので、うちの父が考えたのが富士山のように四隅の裾を広げた形。アイデアマンでしたね。ところが終戦後、殺虫剤のDDTが持ち込まれて、蚊が減ってしまい、蚊帳が売れなくなった。これが一番痛かったですね。

 

その時代に合わせて考えていかないとね。たとえばうちの場合は、だんだん主力が毛糸になってきたんですよ。しかし、大型店と同じ毛糸を売っていても値段の競争になってしまいますから、なるべく良い毛糸を売ろうという信念を持っています。カシミヤとか、アルパカとか、シルク100%とかね。セーターを編むとなると日数がかかわるわけです。安い毛糸だと、手間ひまかけてセーターを編んでもすぐにダラッとなるし、飽きてしまう。でも良い毛糸を使うと愛着も湧きますよね。

 

一番毛糸が売れたのは昭和40年代でした。当時は若い学生がたくさん編んでくれたんです。たとえば、うちのお店に男の子と女の子の学生が来るわけです。女の子が「どれがいい?」と聞くと、男の子が「これがいいな」と選ぶ。彼氏のためにセーターを編むんですね。料金を払うのも、女の子。だから私は「おや、あんた、いいねえ」と言うと、「僕は彼女1人だけど、友だちは3人もいるから、僕の3倍もセーターを着てるんです」と答えたりしてましたね(笑)。今は既製品の時代でしょ。既製品と手編みは、温かみが全然違います。その分、毛玉ができますけどね。あとは、編む楽しさがあるでしょ。「できあがったなあ」という喜びもある。人に見せるのも楽しい。

 20161122_0106竹ノ内 智光(竹長糸店)

長谷久

私がずっと言われてきたことは、「商品を売る前に信用を得るんだ」と。当時、家庭金物では包丁や鍋といった長く使うものを売っていました。すると、売る時だけ上手に対応するだけでは長く続きません。だからまあ、うちの父にしても祖父にしても「あの人は商売人じゃないね」と言われることがよくあったんですよね。ところが、実際の所はそれが長く続いている秘訣じゃないかなと。もうひとつ思うのは、店員が生きがいを持って働ける環境を整えていくこと。うちの店員さんで50年働いてくれた方もいて、そういう方たちが店を支えてきたところは大きいと思いますね。やる気ある店員は商品知識を蓄え、お客さまに無駄な買い物はさせないという信念で接客をするようになります。たとえばハサミでもね、高いものでは数万円するものもあります。柄が取れてしまったら、ここに添え木をして接着剤でつけたら十分使えますよと説明すると、お客さまに喜んでもらえる。親切に接客していると、また何かあった時にはここで買おうと思ってもらえるんじゃないでしょうか。そんないい循環を父や祖父は作りましたね。「商売人じゃないね」という言葉も褒め言葉として受け取っています。

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 長谷川 尚英(長谷久商店)

はり糸

私たちは菓子屋なので、おいしいものを出し続けることに尽きるのかなと思います。ただ、いい商品を作ればいいということではなく、そこには心がこもっていなければいけません。信用・信頼という言葉も出ていましたけど、それぞれの商店に特徴があって、その商店がお客さまに支持されることの連なりが商店街だと思います。今まさに先輩方が言ってくださった、その通りだと思います。いかにお客さまに寄り添った商売を続けてきたかという結果が今なのではないでしょうか。

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 池 一樹(はり糸)

竹長

長谷久さんがおっしゃったように、品物を売るだけでなく、無形のサービスを提供すること。今までで私が一番困ったのが、自分で毛糸を編んだことなんてないんですよ(笑)。

 

長谷久

編んでる姿は、想像もつかないですね(笑)。

 

竹長

すると、お客さまから「この毛糸でセーターを編むと何個いりますか?」と聞かれてもわからないんです。毛糸の種類によって全部違うんです。セーター、カーディガン、ベスト、帽子と、何を作るかによっても全部違う。だからメーカーに「男性用のセーターなら◯玉、婦人用なら◯玉、ベストなら◯玉と、見本帳に書いてくれませんか」と頼みました。今の見本帳を見ると、かならずそれが書いてあります。それも無形のサービスですよね。今はお店で編み方も教えます。編み物の本も置いてありますし、編み図も揃えています。するとありがたいことに「あのお店に行くと色々教えてくれるから、どうせ買うならあそこにしよう」と思ってもらえるんですよね。

 

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